ジャスミンはフランス・グラースを代表する香料植物です。毎年8月から10月にかけて手摘みで収穫され、蒸留またはアンフルラージュによって香料に加工されます。なぜ産地を直接訪れることが重要なのか、調香師の視点から説明します。
なぜジャスミンは手摘みでなければならないのか ¶
ジャスミンの花は、摘んだ後も数時間香りを発し続けます。機械で収穫すると花が傷つき、酵素反応によって香りの成分が変質します。グラースの農家が今も手摘みにこだわるのはそのためです。一人の摘み手が一日に収穫できる量は約1kg。1kgのアブソリュートを得るには、約7〜8トンの花が必要です。
アブソリュートとアンフルラージュ、何が違うのか ¶
アブソリュートは溶剤抽出法で得られる濃縮香料です。現在のグラースでは主流の方法で、コスト効率が高く安定した品質が得られます。アンフルラージュは動物性脂肪に花を重ねて香りを吸着させる古い方法で、現在ほとんど行われていません。アンフルラージュで得られる香りはより繊細ですが、商業的な規模での生産は難しく、価格も非常に高くなります。
収穫年によって香りが変わる理由 ¶
気温、降水量、収穫のタイミングによって、同じ農家のジャスミンでも年ごとに香りの印象が変わります。2025年のように暑い夏は花の濃度が高く、甘みが強くなる傾向があります。雨の多い年は青みが出ます。これがワインのヴィンテージと似た現象で、調香師が毎年産地を訪れる理由の一つです。
Whimsical Elm Glade での使用方法 ¶
「Fougère Juillet」のハートノートにグラース産ジャスミンのアブソリュートを使用しています。毎年10月にグラースの Domaine Cassini を訪れ、その年の収穫状況を確認してから発注量を決めます。品質に問題がある年は発注を見送ることもあります。その場合、そのフォーミュラの製造数は減ります。
産地を訪れることは、品質管理の一部です。農家との関係が続くことで、収穫の状態について正直な話を聞けます。それがフォーミュラの安定につながります。